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  • オーガニックな在り方デザイン・畑で考え学ぶサロンを通じて巡り逢った仲間たちが織りなす世界観

聞くことからしか始まらない

社会人になると、自分の考えを相手に伝える技術が必要とされます。
営業トーク(悪い意味ではなく)やプレゼン力を求められることは多いし、そのテクニックを学ぶ本やワークショップも溢れていますよね。
義務教育も日本伝統の受け身の授業から、欧米寄りの思考を言語化する方向へとシフトしているようです。

自分の言葉で相手に伝えることは、とても大切なことです。
でももしかして…それ以上に大切なのは、相手の話を聞くことなのでは?とここ数年強く思うようになりました。
きっかけは事務職から初めて転職した、アパレル時代に遡ります。

アパレル業界に就職するまで、お客様に直接商品を売るということをしたことがありませんでした。
店舗に立ち始めて数週間、欲しいものを決めてきてくれたお客様ではなく、フラッと立ち寄ったお客様にちっとも商品を買ってもらうことができませんでした。
商品知識がないからだ!と必死で勉強したり、私自身がおしゃれに見えないからだ!とダイエットしてみたり。
でもその努力はちっとも売り上げに繋がりません。
その間も日々着々と売上を立てていく先輩たちの姿を見ていても、何が違うのかわからない。
答えを見つけられず行き詰まったある日、彼女がヘルプにはいるとその店舗は必ず一日の売上ノルマを達成するという伝説のマネージャーと一緒に働く機会がありました。
どんなふうに接客するんだろう。
洋服をお畳しながら(これも大切なお仕事)、彼女とお客様の会話に耳を傾けていたのですが…。
あれ?なかなか商品説明に入りません。
雑談、それもお客様の話に「そうなんですね」「なるほど」「わかります」と相槌を打つばかり。
ですが数十分後、お客様は満足気に商品を抱えて帰って行ったのでした。

お客様の困りごとや要望を掴むために彼女がしていたのは、何気ない会話の中に繰り返されるテーマを掴むことだったそうです。
そのテーマを見つけることで、お客様自身ですら自覚していなかった問題を解決し希望を満たす商品を手渡すことができたんですね。

その一連の流れを間近でみて、そうだよなぁと心から思いました。

モノを売るために必要な技術は、モノの価値をお客様にどれだけ伝えられるか。
そう思い込んでいた私。
だから知って欲しいわかって欲しいという、自分ペースの会話にお客様を巻き込もうと必死でした。
そりゃあ…、お客さまが本当に欲しいものなんてわかるわけもないですよね。

仕事も人間関係も相手あってのもの。
お客様でも、同僚でも、両親でも、友達でも、パートナーでも。
どんなに長く一緒にいても関係性が深くても、相手の今の気持ちや要望を常に把握することはできんません。
だから「〇〇さんはこういう人だから」とか「〇〇さんはこうして欲しいはずだから」、なんて相手のことを知ったように語ることはできません。
私が普段どんなにおにぎりが好きだと公言していても、今はお蕎麦が食べたいと思っていますし(笑)。

知ったかぶりは誤解のもと。
あらゆるトラブルやストレスの大きな原因の一つは、「聞く」を怠るってことじゃないかなぁ。

こんな話を書き始めたのも、今私がそれを強く実感しているからなんです。
対話型のパーソナル料理クラスを始めて数ヶ月が経ち、このクラスで私に一番必要とされているのは料理の技術でもレシピの種類でもなく、相手の話を聞く力なんだと感じています。
受けてくださるどの方も、今より料理を好きに得意になりたいと思っています。
でもその理由や苦手なポイントはみんな違うんですよね。
それを忘れて「〜のはずだから」と、ステレオタイプな提案をしてしまったらこのクラスをやる意味がなくなってしまう。
相手の話を聞く。
そこからしか始まらないことをしているんだぞ。
自戒の意味も込めて。

もちろん日常生活でも、いい関係性を築きたいのなら「まずは相手の話を聞く」ですね。
聞くことからしか始まらない。
聞くことから始めよう。

投稿者プロフィール

大塚佑子
大塚佑子
あなたのおうちご飯のアシスタント、「ひびのわ」を主宰。
レシピのない料理会を定期的に開催中です。(オンラインもリアルも)
「アルモンデナンデモデキルサ」を唱えながら、その日その時、目の前の素材を美味しく食べきる料理をお伝えしています。
調味料の選び方や組み合わせ方、野菜メインのご飯、お家で作れる発酵食品などのお話が得意です。
私にもあなたにも地球にも心地よい暮らしを「台所」から、一緒につくっていくお仕事を只今模索中。

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