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コーチング付きでオーダーメイドの畑作り。未来は、農を軸に多様になる

循環する農をライフスタイルに合わせて学ぶ「ハタサロ」では、学びと共に実践を促している。ハタサロメンバーのひとりで、アフリカ・ケニア産のバラを輸入販売する『AFRIKA ROSE (アフリカローズ)』を展開する実業家でもある萩生田愛(はぎうだ・めぐみ)さんと同じくハタサロメンバー の小島寛之さんは、都内郊外において家庭菜園を軸とした「ネイチャリー」にて実践を始めようと準備中だ。

ハタサロにて長谷川晃さん(通称ハッセコーチ)からの指導を受けながら、並行して展開するネイチャリーは、さながら畑における「学びの循環」を実現するかのようで、誰もがありのまま居られるコミュニティづくりを目標にしていると言う。(前編『ハタサロと共に実践を開始。「ネイチャリー」の始まりに聞いた、農の可能性とは』参照)

簡単そうにも、また、難しそうにも思えるネイチャリーの活動だが、愛さんも小島さんも非常に楽しそうで「畑はプレイフル」だと話す。ワクワクして夢中になることを意味するその言葉の理由を、具体的に教えてもらった。

分かりやすく丁寧な畑コーチング

愛さん  最初にハッセコーチにお会いしたとき、ネイチャリーでどんな世界を望んでいるか、とても丁寧に聞いてくれました。わたしはまだ畑について知らないことばかりなので、「どんな畑のデザインを望むか」と聞かれても困ってしまうのですが、畑に何を望んでいるか、どういう価値観を実現したいか、という願いを理解してくれた上で、それならこういうのがいいのでは、と提案してくれたんです。
具体的には、無農薬であることに加えて無肥料栽培でもあること。それから、栽培する作物も色んなものを混在させる方が多様性があるといったことも教えてくれました。
元々この場所は、ドクダミがたくさん一面に生えていた庭で、ハッセコーチと知り合う前にわたし一人で1ヶ月位掛けて抜いたところでした。その時はまだ寒い季節で、コーチには「今は何も植えられない」と言われたんですが、わたしはすぐにでも始めたいと相談したんです。それでコーチも、土の成分や日当たりなどを調べてくださり、どこに何を植えるのがいいかなど、考えてくれました。

小島さん  最初にハッセコーチが来てくれたのは確か12月頃で、実になるものは植えられないと言われたんですよね。でも始めたいというなら、今のうちに土を整えるものを蒔きましょうかと教えてくれたのが、麦と大豆でした。麦が土を耕すこと、大豆が根粒菌をつけて窒素を増やしてくれることなども実践と共に教えてくれて、分かりやすかったです。

愛さん  先に理論を与えられるのではなく、こちらの要望を聞いてくれるところから始めてくれたおかげで、すごく分かりやすいし、わたしたちにとっては余計な情報に混乱しないで済む。コーチの言う通りにしておこう、って素直に思います。
教え方もとっても丁寧でありがたいです。タネも固定種や在来種にこだわりたいことを相談したら、どこの種苗屋さんがいいか教えてくれました。自分でネットで言われた通りにタネを買い揃えて、でもどんな風に植えたらいいか不安なので、またコーチの指導に沿う。線を引いてくれて、このくらいの間隔でタネを蒔きましょう、とまさに手取り足取りです。
畝の保温や保湿のために使うマルチも、ビニール素材のメリット・デメリットから教えてくれたので、できればビニールではなく自然に優しい方法がいい、とすぐに答えられました。それなら緑肥といって土中に窒素を取り入れる草を蒔きましょう、ということになり、刈った草をマルチのように使うリビングマルチを覚えました。このヘアリーベッチも緑肥です。

コンポストも、思いも、すべて循環の世界

小島さん  以前ハッセコーチから、「ネイチャリーが循環し始めたらそれは自分にも返ってくる価値があるから」と言ってもらったことがあり、とても嬉しかったです。畑のちょっとしたお世話や小さな気づきは愛さんが事あるごとに共通のメッセンジャーで教えてくれて、コーチも必要な時は丁寧に返事をくれています。

愛さん  実は、「冬だけど早く始めたい」と相談した時、芽が出ないかもしれないけどダメ元で蒔いてみましょうか、と言ってくれたコーチの指導で、いくつか野菜のタネも蒔いたんです。でもダメかもしれないなぁと思っていたのですが、ある時たくさん芽が出ているのに気がついたときは、うわ〜命だ〜!って素直に感動しました。
本当に嬉しかったなぁ。芽が出たことにあんなに喜ぶなんて、自分の変容に自分自身が驚いています。最近は土からミミズが出てきても驚かなくなって、むしろミミズはちょっとかわいいとさえ思うようになったし、葉っぱが虫食いにあうことも、この野菜を出荷しているわけではないので腹を立てずにもいられます。虫の命が循環するなら良いかな、と思ったりして。
次にコーチが来てくれる時は、なかなか芽が出てこないポットのことを相談したり、人参の間引き方法、あとはコンポストのことなんかを聞きたいですね。

愛さん  わたし自身、ゴミ問題の関心が強いので事業にして解決しようと思ったけど難しくて(前編記事参照)、それならまずは、小さくてもいいから自分でやってみれば何か道が開けるかもしれない、と考えたこともネイチャリーの始まりに影響しています。この家庭用コンポストも1ヶ月以上経ち熟成されて良い感じなので、まずはこれを畑に使いたいと思っています。

思いに具体性をもたらした母の存在

愛さん  実はネイチャリーのコンセプトには、母の存在も大きいんです。母は今、自宅を増築して長年の夢でもあったフランス料理のお教室を主宰しているのですが、そこで使う野菜が庭から採れたらすごい循環ですよね。生ゴミはコンポストで循環させて、その畑で採れものを食卓やお教室で使えたらいいな、と。これを最初に思いついたのは、小島さんでしたね。

愛さんのお母様、萩生田 達子さんは、元々好きだった料理の腕を活かし、現在は本格的なフランス料理を伝えている。

達子さんのコース料理、前菜一品目はカリフラワーのムース、コンソメジュレ乗せ。この日はサラダにネイチャリーのコリアンダーや、人参の葉が使われていた。

ネイチャリーの畑からエゴマを収穫しながら「わたし自身は環境問題よりも、小児喘息があった娘たちのために無農薬や無添加の食材を使うことが大事だった」と語る。60歳でソムリエの資格に合格する他、多才でまっすぐ、萩生田家の太陽。

小島さん  達子さんのお料理を初めていただいた時、あまりにも本格的でおいしいことに驚いて、もしもいつか、お庭から採れる食材でこのクラスの料理が出せたら最高だなって思ったんです。循環を活動の軸とする愛さんの思いと親和性もあるし、ぼんやりと考えていた在り方の具体策としても良いなって思いましたね。ネイチャリーに関して、愛さんの課題をひとつずつ解決することが、僕にとっての自己実現にもなります。
愛さんて、あまり小さなことを気にしないで任せてくれるし、それでいてちょっとした悩みとか考え事は言葉にして聞かせてくれるので、僕からもこうした提案はしやすいんです。

愛さん  母の場合は環境問題という視点よりも、すぐそこに野菜があれば買い物に行かずに助かる、みたいな理由の方がメリットになるのですが、そうした感覚のままでもリジェネレティブでいられることが理想的な社会なんですよね。わたし自身は気候変動における原因ではなく解決の一部になりたい、という情熱がありますが、別にどんな理由で行動したっていいわけですから。畑なんて興味ない、という友人たちにも、無理に興味をもたせるより、おいしいとか楽しいといった動機付けを応援したいです。

ネイチャリー、すぐそこの未来に向けて

小島さん  将来的なネイチャリーの目標としては、木枠で畑にコンポストを作って実践したいと思っていて、それも様子を見ながらハッセコーチに相談したいことです。その上で、コミュニティとしての仕組みや運営方針などを慎重に考えたいですね。

愛さん  そうですね。ハッセコーチは、リジェネラティブであることの理由として、土壌における物理的な理由と、動物福祉であるアニマルウェルフェア、それと社会的な価値まで含めて良さがあると教えてくれたのですが、個人的にはそれらをもっと自分の中に落とし込みたいです。頭では理解してるけど、小さな子どもたちにも説明できるほど自分の言葉で語れるかと問われたら、今すぐはまだ難しいから。でも近いうちにはちゃんと子どもが納得できるくらい語れるように学びを深めたいです。自分自身に、確固たる農の軸をもちたいと思っています。

始まったばかりであるネイチャリーについて聞かせてくれた、ハタサロメンバーの愛さんと小島さん。
実業家である愛さんは非常に多忙だが、長時間のオンライン会議などが続くとふと空いた時間に庭に出てネイチャリーの草取りをしたりするという。「夢中になってしまうとあっという間に1時間近く経っていたこともある」とは、まさに畑がプレイフルである証拠。

愛さんの感性と、小島さんの視点に、ハッセコーチのアドバイスが活かされ、小さなサンクチャリーが立ち上がっていく。

インタビュー取材を終えて。ハタサロをオーガナイズする塚本サイコ(左)、ネイチャリーを始めたハタサロメンバーの萩生田愛さん(中央)と小島寛之さん(右)

 

撮影;羽柴和也

取材;やなぎさわまどか
ライター/ 編集/ 翻訳マネジメント
株式会社Two Doors代表。10代からの留学と海外生活を経て帰国後、グローバル企業における多言語メッセージの発信をマネジメントするコンサルティング企業に勤務し、言葉がもつ力の奥深さを実感する。東日本大震災を経て独立後、食、農、環境問題をテーマにした取材執筆で複数媒体に寄稿するほか、企業や団体での制作や広報を担当。そのほか関心領域はジェンダー、人権、政治、映画など。

ハタサロ畑コーチ;長谷川晃
サッカーコーチから農家に転身し就農10年超え。八割を固定種在来種で栽培し種採りも行う。シリアでのサッカーコーチ時代、子どもたちがお腹が空いて動けないという現実を目の当たりにし食の大切さに目覚め帰国後農家に。同時に、サッカーで旅した世界中の地球環境の劣化や砂漠化などを体験したことで自身の農家としての役目を導き出す。哲学を共にするアウトドア企業パタゴニアの理念に共感し、環境を再生する農業に取り組み、農業によって地球環境を再生しより良くしたいと考えている。

Riceball.Network過去記事にて、やなぎさわまどかさんが手掛けた長谷川晃氏のインタビュー。
SALDA REVOLUTION 社会に向けた価値創造。「サラダレボリューション」が目指すものとは 前半 / 後半

 

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