リジェネラティブな農業と在り方を目指すハタサロが提案。家庭で自然栽培を実践する”農トレ”がスタート。
土壌を改善、修復しながら気候変動対策にも有効なリジェネラティブ農業。循環する農業と在り方を個々のライフスタイルに合わせて学ぶ “ハタサロ” では、メンバー各自のご自宅のお庭やベランダ、借りている畑などをサテライトと呼び、ハタサロの畑基地から持ち帰った種や苗の栽培を始めます。
今回はハタサロのメンバーであり、働く母として当webマガジン arila!にてマガジンを持つ岩田真理子さんが、ご自宅のお庭を家庭菜園にすべく、ハタサロの畑コーチ・長谷川晃さん(以下 ハッセコーチ)のご指導のもと、自然に寄り添う循環型ライフスタイルのベースを築きます。お二人にとっての食とは、農とは? そして、現在に至る”在り方”についてお話をうかがいました。
【ハタサロの農トレ実践編】「資材や道具は最小限! お庭を活かすリジェネラティブな家庭菜園をご自宅でコーチング」、「家庭菜園の土作り」も併せてご覧ください。
“実践までがインプット” ハタサロの哲学に共感しました。
真理子さんが二世帯(ご両親、旦那様とお嬢様)で暮らすご自宅は、都心とは思えないほど日当たりがよく、和やかな雰囲気に包まれています。お庭に訪れたのは10月ですが、ざっと眺めただけでも50~60種類の草花が生き生きと育っています。
「決してマメな性格ではないけど、実験だと思って好きな植物を育てているの。」と笑顔でおっしゃるのはガーデニング歴50年以上の直美さん。真理子さんのお母様です。
真理子さん
母はとっても自由。クリスマスローズを育てたいと思うと、その数ヶ月後には庭中にクリスマスローズが咲き乱れる感じです(笑)思い立ったら昼夜問わず食事もせずに庭いじりに没頭する母の姿を何度も見ています。
そんな母の具現力と「実践しなければ意味がない。」というハタサロの哲学に突き動かされ、私も庭の一部を菜園にして野菜を育てたいと思いました。
ハタサロに通って半年が経ち、毎回分けていただく苗や種の居場所もプランターだけでは足りなくなりました。「ハタサロって、こんなにも実践主義なんだ!」と驚いています。
ハッセコーチ
例えば、セミナーやワークショップでどんなに素晴らしいことを学んでも、会場を出た瞬間にいつもの自分に戻ってしまう … これはよくあることで、それだけは避けたいと、主催のサイコさんと話してるんです。ご参加くださったかたの実生活こそが表現の場となるように、新たな苗や種を持ち帰っていただいています。
ハタサロのFacebookプライベートグループでは「なぜ、うまくいかないのか?」といった疑問や失敗談などをメンバー内で共有するとともに、ハッセコーチからの適切なアドバイスを得られるようになっています。
真理子さん
ハッセコーチのアドバイス、そして、現状をシェアできるメンバーがいることで、失敗すら醍醐味となっています。ハタサロの学びは畑基地だけでは完結せず、植物が暮らしに根付く豊かさ、そして、初心者や既に半農半X的な暮らしを実践するメンバーとともに、土を通して語り合える喜びを感じています。みなさん、経験やスタンス、栽培環境が違うので学びも多い。
それに、自宅で家庭菜園を始めようというとき、こうして実際にお庭を見ていただける機会は貴重です。土質も日当たりも間取りも、個人宅ごとに全然違いますからね。
ハタサロメンバーのひとりで、アフリカ・ケニア産バラの輸入販売『AFRIKA ROSE (アフリカローズ)』を展開する萩生田愛(はぎうだ・めぐみ)さん。同じくハタサロメンバーの小島寛之さんによる、家庭菜園を軸としたコミュニティ作りにも、ハッセコーチはオーダメイドの畑を作るためのコーチングをなさっています。「コーチング付きでオーダーメイドの畑作り。未来は農を軸に多様になる。」
ハッセコーチ
植物を育てるうえで基本となるのは土ですから、コーチングはその土地に訪れて土壌検査することから始めます。さらに、そこに生えている草木の様子、日当たり、風通しなど、自然環境をチェックします。
そして、何より大切なのが「そのかたが植物とどう関わって暮らしたいか。」ということです。
週末農なのか、それとも、毎日向き合えるのか。一人暮らしでお仕事が忙しかったり、または、同居しているご家族と家庭菜園を楽しみたいと思っているのか。なにを育てたいか。そんなビジョンを明確にうかがいます。
初めて植物を育てるかたは、ヴィジョンを描くのも難しかったりしますが、畑での実地やメンバーとの語らいから、どんどん理想が見えてくるみたいです。
真理子さん
私もさっそく前回のハタサロで教えていただいたように、まずはレンガで囲いをして畑の場所を決めました。腰が痛い人はレンガを重ねて上げ床を高くするとか、車椅子なら座高に上げ床の高さを合わせたり、手が届く範囲で植物を植えるとか。家庭菜園は本当に自由自在にアレンジできるんだと実感しました。
忙しくて時間が取れない場合は、一年草ではなく、あまり手のかからない多年草を選ぶなど、やらない言い訳が出来ないくらい(笑)その人の生活に合ったアドバイスをいただけますね。
ハッセコーチ
実のところは畑の都合(土の状態)で栽培を進めてゆきたいのですが。その人が自然と関わりやすい環境を作ること、その両者の折り合いをつけていく作業が私の仕事だと思っています。
真理子さんは栽培経験豊富なお母さま、そして、お父様も丁寧にレンガをお庭に敷いてくださったようで、素晴らしい協力者がいて何よりですね。可愛らしいお嬢さんも発想が豊か。どんどん新鮮なヴィジョンが広がります。
家庭菜園は「本当のこと」をシェアできる場所。
現在、幼稚園に通う美遥(みはる)ちゃんはハタサロにも参加してくれています。チャーミングなリーダーシップでメンバーたちはメロメロ。吸収力が凄まじく、農の英才教育、地球の期待の星だと感じました。
真理子さん
みなさんに遊んでいただいて、かなり積極的に楽しんでいます(笑)
ハタサロで娘が「みんなは芽が出てるのに、ママのだけ出てない!」と、悲しそうな顔をしたことがあって…。親も失敗することがあるとか、思うように進まず残念なことも多いんだとか。達成感や喜びだけでなく、小さな挫折も共有できたことが嬉しかったです。
ハッセコーチ
確かにそうですね。長年、農家をやっていても失敗から学ぶことが多いです。大自然の偉大さや難しさ、厳しさなど、生きるうえでの”本当のこと”を身を以て知るよい機会かもしれません。
真理子さん
そうなんです。その”本当のこと”を娘と共有してゆきたいです。これから、どんな世の中になるかわかりませんよね。未来を強く生き抜いてもらうためにも、生き物としての真実に向き合う力をぜひ体得してほしい。
自然は決してコントロールできないもの。人間は植物より随分後に地球にやって来たのに、派手にのさばっているとかね(笑)細胞レベルで理解してほしいです。
ハッセコーチ
大抵の方々が、最初は収穫を目的に農業を始めます。しかし、実際はお天気にも左右されるし、気候変動まで起こっている。人間は大自然には絶対かなわない。そんな真実に圧倒されて初めて、自然栽培の尊さが身に染みてわかり、そこにかける手間隙こそが楽しくなってゆくと思います。
子供たちが戻れる場所を創造したい。
真理子さん
ハタサロで苗をいただくと、娘が喜んで水遣りをしています。園芸店に出掛けるときは必ずついてきて、好みの鉢を選ぶようになりました。植物を育てるのが好きみたい。まぁ、いつまで続くかわからないけど。
ハッセコーチ
1度離れても、必ず戻ってきますよ。子供ってそういうものです。
真理子さん
確かに。その点は味覚と一緒かも。私もそうでしたが、子供って1度はジャンクフードの魅力にハマりますよね。健康にはよくないと思いますが、ジャンクな味も知っていたほうが、この世界を生き抜く免疫が出来ると思います。清濁合わせ持つ力って大切ですから。
ハッセコーチ
そうです。オーガニックとジャンク、両方知っていたほうがいい。そういった意味では、慣行栽培について知っておくと様々な理解に繋がる。どんな理由で資材をケミカルにするのかよくわかりますし、化学肥料や除草剤を使うことで「何が出来て何を失うのか」。人間の都合やそれに付随する弊害を目の当たりにすると、リジェネラティブな農法の必要性をさらに痛感できる。「最終的に収穫量が上がればいいのか?」「それで土壌を傷めたら結果的にどうなるのか?」 「ならば、僕らは後世に何を残してゆくべきか?」 まさに、生き方や在り方、そのものです。
真理子さん
ジャンクを通過することで、自然に近い生き方を選択する必然性がよりクリアに見えてくる。体が欲するようになりますからね。私の周りでも体調を崩してから自然食を選ぶようになったり、さらには自然に寄り添う循環型ライフスタイルを学び、実践し始める人が多いです。
親としては、様々な世界を冒険して、いつでも帰って来れる在り方、生きる土台を創ってあげたい。家庭菜園には、そんな可能性を感じます。
自然からは収穫以上の見返りがある。
畑を借りたり、家庭菜園を始めるとなると、収穫が第一目的になることも多いと思うんです。栽培を始めることで出てゆくお金と収穫物との対価を綿密に計算したりとか(笑)
だけど、こういうお話をうかがっていると、家庭菜園は金銭の等価交換から離れられることこそが魅力だと気づかされます。
真理子さん
そうなんです。自然栽培はプライスレスな部分こそが真価です。結実自体が見返りではなく、そこに関わる全てが見返りとなる。そもそも、趣味ってそういうものかも。
ハッセコーチ
農家としての意見ですと、自然栽培だと大量生産できないので各自で作って欲しいという気持ちがあります。自然栽培の野菜を毎日購入するとなると貴重でしょう。
一億総生産者たれとは言いませんが、最初は結実が目的だとしても、続けるうちに愛着が湧いてくる。気候変動などの環境問題も他人事ではなくなる。個人でも次はこういう工夫をしたいとか必ず出てくるので、おもしろくなると思いますよ。
真理子さん
食べないと生きていけないのに、買うのが当然となっている世の中には違和感があります。東京に住んでいると、食料の自給は夢のまた夢ですが、ゼロのまま諦めるのではなく、全てを人任せにしない姿勢を大切にしたいです。
私の師でもある自然食料理人の船越康弘さんから「人間を創る遺伝子や幼少期の環境は選べないけれど、その後の食の決定権は自分にあるのだから、そこで命の質をあげられる。」とうかがい感銘を受けました。お天道様に応援される生き方、人としての当たり前の営みを叶えるためには、栽培方法を選びたいし、自ら野菜を育てられたら、こんな充実感はありませんよね。
ハッセコーチ
何を持って幸せなのかじっくり考えることが大切ですね。人間っていうのは世の中のことばかり気になる生き物ですから。悩み、ストレスの原因はほぼ人間関係。その悩みを別の人間に相談しても、新たな悩みが生まれちゃうから。
真理子さん
人間に言われたらカチンとくることも、植物に気付かされると納得してしまうタイプですね(笑)
ハッセコーチ
植物は厳しいときは厳しいけど、なんでも受け止めてくれる懐の大きさがありますよ(笑)
私は、農業は生きやすさに繋がると確信しています。ゼロから1が生まれたときの喜びは何ものにも変えがたい「生きる力」となりますからね。
それでは、お二人とお庭に出ましょう。【ハタサロの農トレ実践編】のスタートです。この続きは「資材や道具は最小限! お庭を活かすリジェネラティブな家庭菜園をご自宅でコーチング」をご覧ください。
ハッセコーチによる「土から考える」プランター栽培ワークショップも体験できるarila!主宰イベントが2021年12月7日に高尾の新しい名所、活動型ホテル「タカオネ」で開催されます。入場無料!どうぞお越しください。
Organicに!”好き”を持ち寄るMEETUP&SHOWCASE
ハタサロ畑コーチ;長谷川晃
サッカーコーチから農家に転身し就農10年超え。八割を固定種在来種で栽培し種採りも行う。シリアでのサッカーコーチ時代、子どもたちがお腹が空いて動けないという現実を目の当たりにし食の大切さに目覚め帰国後農家に。同時に、サッカーで旅した世界中の地球環境の劣化や砂漠化などを体験したことで自身の農家としての役目を導き出す。哲学を共にするアウトドア企業パタゴニアの理念に共感し、環境を再生する農業に取り組み、農業によって地球環境を再生しより良くしたいと考えている。
岩田真理子
ERAN株式会社 代表取締役 国際線乗務員経験を経て、人財育成の会社を設立。 多くの研修・コーチング提供し、自身の体調も含め、食事の在り方、大切さを痛感。 師、船越康弘氏と出会い、”食を通じて社会に貢献したい”と思っていたことろに、結婚出産を経験。生後間もない娘を抱っこしながら、夫の新規事業のオーガニックカフェレストラン”きせきの食卓”のコンセプト、週ごとに変わるメニュー開発を担当。 現在は、子育てに軸足を置きつつ、講師活動も再開。 人としての日々の在り方、暮らしの哲学を研鑽中。 子どもの頃の夢は全部かないました。CAも先生も、ママになることも。 だからこそ、次世代にも、その次以降の世代にも恥ずかしくない選択をしてゆきたく ハタサロの一期生に一番乗りしました。 テーマは『倖ばしい暮らし』 好きなことばは『すべて大丈夫』
取材 文;村井砂織
ライター。白砂糖やNa塩、食品添加物不使用の有機スパイスシロップ屋 “ほっぺた” 店主。編集長を務めるarila! にて 温活マガジン『あたためてやるよ。』連載。家族の闘病生活や8年間のカフェ営業、幼少期からの体調不良の改善を通じて、体を温めること、食の大切さを実感。体を温めることで起こる自然治癒力、感情や記憶、自己愛の発露に興味を持っています。ピアノ弾き語り、散歩、うたたね、小鳥、日本酒が好き。チネイザン(氣内臓)勉強中。
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