土から生まれ、土に還る物作り。藍染めと出会ったときの感動を叶えるために土作りを学びました。
ハタサロのメンバー ナカタニ ミユキさんは「土から生まれ、土に還る物作り」をモットーに、自ら藍を育て染料を作り、自らデザインした型染めで手拭いを作っておられます。天然発酵建ての豊かな色彩と風合い、ミユキさんのオリジナルデザインはネットショップやマルシェでも大人気です。
今回は、ミユキさんが講師を務める叩き染めワークショップにおじゃまして、藍染めのこと、土のこと、ハタサロについて、お話をうかがいました。
春に種を撒き、夏に刈り取り、藍の葉を発酵させて染料を作ります。
arila!事務局(以下省略)
ワークショップお疲れさまでした。大人もお子様もみなさん集中して、藍の葉の叩き染めを楽しんでおられました。畑で藍を摘むところから体験できるなんて嬉しいですね。
ミユキさん
会場である薬師台メディカルテラスさんから、藍を育てるための畑をお借りしているんです。そのお礼として、藍染めのワークショップを開催しています。
参加者の皆さんには藍の収穫を体験して頂くとともに、実は私の仕事を手伝ってもらっているんですよ(笑)
ミユキさんは、現在、町田市、相模原市、八王子市など、なんと六カ所の畑で藍を栽培なさっています。
ミユキさん
ワークショップやマルシェ各所で「自分で藍を育てたい。」と話していたら、畑や場所を貸してくださる方々と繋がれて、即実践となりました。収穫期の夏は複数の畑を巡って、寝ないで作業することもあります。一人で栽培しているので、それぞれの畑は小さいんですよ。
ミユキさんのその吸引力と実行力が素晴らしいです。そもそも、藍染めを始めたきっかけを教えていただけますか。
ミユキさん
もう10年以上前になります。フリーランスでデザイナーをしながら障がい者施設で働いていたとき、子供たちの訓練の一環として行う物作りを探していました。簡単に出来て楽しそうなものはないかと模索するうちに染めに行き着いたんです。
初めはご自身主体ではなかったのですね。
ミユキさん
そうなんです。当時、藍原という姓で仕事をしていたので、藍染めなんかどうかと(笑)
かなり軽やかなお気持ちだったわけですね(笑)
ミユキさん
ただ、子供たちに指導するに当たって、事前に詳しく調べました。そうしたら、藍を発酵して作る染料を「スクモ藍」というのですが、この染料がとても栄養が豊富だそうで、染め終わったあとのスクモ藍を畑に撒いて、次に育てる藍のための栄養にするのだとか。この手法を知ったとき、心が「うわぁ~」っと熱くなりました。衝撃が走たっというか、すごく感動しましたね。
循環型の栽培法ということですね。
ミユキさん
そうです。土で生まれて土に還るなんてかっこいいなぁ!って。自分でもやりたくなりました。
ミユキさんはもともと自然派志向だったり、環境問題にご興味があったのですか。
ミユキさん
いいえ。どちらかというと、ムダが嫌いというか、貧乏性なんでしょうね。幼少期から工作のときは紙や布のはじっこから使って、極力ムダを出さないようにしてましたから(笑)
藍染め。いっさいムダがありませんね。
ミユキさん
そうです。そこが心底素晴らしいと感じて「藍染めを習いたい。」と思い立ち、ネットで調べたら近所に教室を見つけました。そのうち連絡しようとしていたら、その日の出先にそこのスタッフがいらして。早速、その週から習うことになりました。
なんだか運命に応援されていますね! 実際に体験していかがでしたか。
ミユキさん
子供たちに教えるために習い始めたんですが、染める作業が思いのほか楽しくて、楽しくて!
… ご自身がハマってしまったわけですね(笑)
ミユキさん
そうなんです。同じ頃、美術大学で助手もしていたのですが、作品を制作している学生たちを見てたら自分も作りたい気持ちが強くなりました。もっと真剣に染めを勉強したいと先生に伝えたら、その教室で働くことになったんです。
まぁ! トントン拍子にことが進んでいます。
型染めと出会い、作る喜びに導かれ、土についてを学ぶことになりました。
ミユキさん
藍染めと言っても様々な染め方があるんです。いろいろな手法を勉強してゆくうちに、型染めというものに出会いました。
型染めとは、デザインした型を彫ってから染める方法だとミユキさんのマガジンで拝見しました。
ミユキさん
初めて型染めを知ったとき「… あれ? そもそも、私ってデザイナーだったよね ? デザイナーなら自分で型をデザインするべきなんじゃないの?」と、背中を押されるような気持ちになりました。
素敵。これまでの歩みと未来が繋がった瞬間ですね。
ミユキさん
それからは 、自分が欲しいと思うデザインの手拭いを作ることに決めました。楽しくていっぱい染めてたらどんどん手拭いができちゃって、知人に配ったら「売ってくれない?」と頼まれるようになりました。
素晴らしい。手拭い作家の誕生です。
ミユキさん
ならば、通販もやってみようと。手作りのサイトで出したら意外に売れまして…。
もっと楽しくなっちゃった。
ミユキさん
はい。でも、そうしたら思い出したんです。”自然の力を借りて染める”という最初に藍染めに出会ったときの感動を。
「土から生まれ、土に還る。」ミユキさんの屋号”ツチカエル”の所以ですね。
染め終わったあとの染料を土に還し、その豊かな土壌で藍を育てるという。
ミユキさん
「自分で作品を作るのなら、この夢を叶えたい!」「自分が良いと思うことをやりたい!」という強い気持ちが湧き上がりました。
あと、スクモ藍は希少価値が高く高額です。手に入りにくいので栽培の必要性も出てきました。
ネットで調べたら染料となるタデ藍を栽培している染色作家を見つけたので、その方が住む栃木県まで栽培を学びに行きました。
さすがの行動力です。
ミユキさん
その後は学んだことを実践して、新たな問題が出てくるとその解決法を調べたり、知り合いの農家さんに聞くなどの繰り返しでした。
そんななか 、タデ藍を栽培している無農薬の農家さんの畑を訪れる機会があったんです。すると、その畑の藍の葉が自分が育てた藍より数倍も大きくて元気なことに驚かされました。
理由をうかがうと、畑の土作りに8年かかったとおっしゃる。
それをきっかけに土について学ぶことに決めました。葉が大きいとその分、染料も取れるので。
その畑は、自然栽培に近い方法でしたか。
ミユキさん
農薬や化学肥料はもちろん使用していません。「雑草を抜くから土がダメになる。」ってその方がおっしゃていて、当時は大変驚きました。
でも、その栽培法の素晴らしさを畑のタデ藍が証明していたわけですね。
農家さんに聞きづらいことも、ハタサロなら納得ゆくまで質問できる。
土作りといえば、リジェネラティブ・オーガニックを推奨するハタサロに繋がります。ミユキさんは昨年の9月から参加なさっていますが、メンバーになるきっかけは何でしたか?
またもや、強烈な吸引力を発揮なさったのでしょうか(笑)
ミユキさん
実は…そうなんです(笑)
有機農作物や自然食品を扱っている地元の八百屋さんで「土作りを学びたい。」と話していたら、たまたまそこにハタサロのメンバーさんがいらして(!)見学に誘われたんです。
へぇ! そんなことってあるんですね。
ミユキさん
そして、すぐに見学に行ったら、皆さんが土作りについて詳しくお話なさっていたので即参加を決めました。
実際に参加していかがでしたか。
ミユキさん
畑コーチの長谷川晃さんが自然栽培の農家さんなので、遠慮なく質問しまくれるところが有り難かったです。知り合いの農家さんだと、それぞれ大切にしていることが違うので、聞きづらいことも多いですから。
確かに、そうですね。ハタサロには農家さんが何人かいらっしゃるので土質や地域による違いなど多角的な生きた知識が得られますね。
ミユキさん
畑によってタデ藍の育ちかたが全然違うとか、ぼんやり疑問に感じてたことも、ハタサロで学ぶことで納得のいく知識となりました。
畑にあるものが肥料になるとうかがった時は嬉しかったですね。肥料を買わずに済むなんて、ラクしたい私にぴったり!
雑草も刈らなくていいんですものね。
ミユキさん
雑草はめちゃくちゃ土を豊かにしてくれますからね。長年の重荷から解放された気分でした。
ハタサロはプロの農家さんだけでなく、様々な職業のかたがいらっしゃいますね。
ミユキさん
私にとっては普段出会えないような方々と出会える場所なので新鮮で楽しいです。
あと、思い立ったら何月からでも参加できるのも有り難かったです。
畑基地ではお野菜も育てていますか。
ミユキさん
私はタデ藍しか植えていません。
わかりやすいです(笑)ミユキさんは、藍を育てたいんですものね。
ミユキさん
作家にとっては作品を作ることが食べることと同じくらい大切なので、私は藍だけでいいかな。
ハタサロで藍染めのワークショップを催したり、私にも還元できることがあったのも嬉しかったです。
ミユキさんにとって土の学びは、作品を作るためですものね。
ミユキさん
学生時代から作家に憧れて、いろんなものを作ってきましたが、誰かから評価されても自分自身は納得できなかった。
でも最初に型染めをしたとき「これを極めたい。」「これこそ自分の表現方法だ。」と確信しました。
今後もいろんな場所でワークショップを続けたいし、自分の工房も持ちたいですね。
お婆ちゃんになっても緩く長く、藍染めを続けられるように、土作りや栽培法も自分なりの工夫を加えて改善してゆきたいです。
プロフィール
ナカタニ ミユキ
子供の頃から作る事が大好きで、美術大学に進学し、デザイナーとなる。 現在は染めと織の工房で働きつつ”ツチカエル”という屋号で自然の力を借りて染める型染手拭作家。染め教室講師。
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