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  • 「振り返ると脱サラは、自分を縛っていた “ねばならない” を外す一環だったようです。」

「振り返ると脱サラは、自分を縛っていた “ねばならない” を外す一環だったようです。」

「もっと自分らしく仕事がしたい。」「気の澄む生き方をしたい。」と感じつつも、慣れ親しんだ環境も居心地がよく動くことができない … そんなかたも多いのではないでしょうか。

そこで、今回は15年間勤めあげた商社を辞め、料理家として独立なさったひびのわ主宰 大塚佑子さんにお話をうかがいました。佑子さんは arila!にて、マガジンを綴ってくださっています。

佑子さんの料理教室はオンライン、リアルともに幅広い年齢層の方々に人気です。ひびのわradioでは、料理用語では表現しきれない “いい塩梅” を佑子さんのやわらかな声と言葉で表現なさっています。
穏やかでほっこりとした印象の佑子さん。独立への不安や葛藤、実り、そして、これからのお仕事について。arila!主催 塚本サイコとの出会いや在り方講座についてのお話をうかがいしました。

今を逃したら自分は一生変われないと感じて、会社を辞めました。

arila!事務局(以下省略)
佑子さんは料理をベースにとても幅広い活動をなさっていますね。独立してまだ二年目とは驚きです。

佑子さん
会社員時代から社内のイベントでみんなに手料理を振る舞ったり、月に一度、自宅で料理教室を開催していましたから、料理を仕事にすることには抵抗はありませんでした。
ただ、独立の壁はとても厚かったです。長年勤めているから仕事も身についているし、有難いことに人間関係にも恵まれていました。もちろん、経済的にも安定していましたからね。

会社勤めしながら、食にまつわる学びやワークショップに毎週末のように通われていたとうかがいました。さらに、ご自身で料理教室をなさっていたとは。とても活動的で、インプット、アウトプットともに充実なさっていましたね。
心地よい生活を手放した一番の動機は何だったのでしょうか。

佑子さん
うーん。今思えば、コンプレックスだったと思います。

コンプレックス? 佑子さんの行動力からはちょっと想像できないですが。

佑子さん
いえいえ 。常に劣等感がありました。
順応性があり過ぎるというか、器用な自分が大嫌いで、苦しかったんです。

順応性も器用も、一般的には短所でなく長所ですよね。

佑子さん
よく言えば、そうですが、自分の意志や好き嫌いがはっきりしていないところが、昔からコンプレックスだったんです。
高校時代に話は遡りますが、私、仲の良かった友達の喧嘩の仲裁に入ったことがあるのですが…。

なるほど、喧嘩はよくないですものね。

佑子さん
私もそう思ったんですよ。ところが、両者から「佑子のムダな平和主義がうざい!」と激昂されまして(笑)
その言葉が今でも胸に残っているんです。本当にその通りだなと思いました。
私はいつも場の空気を読んで、何事も円満に治めようとする。サラリーマン生活を続けながらも趣味を副業にしたりして、なんだか自分って中途半端だといつも感じてました。

そんなことないですよ。
両方こなすなんて、努力や工夫もあったでしょうし、立派なことです。

佑子さん
全然立派じゃないです。例えば、私は音楽が好きで30歳過ぎまでドラムを叩いていたのですが。

えぇ! ドラムですか。穏やかな佑子さんの雰囲気からは意外です。かっこいい。ジャンルは?

佑子さん
そこなんですよ! 私、ジャズからロック、ビートルズのカバーも演ってたし、ハードコア、デスメタルまで、頼まれると何でも叩いてしまって。どれだけ自分、器用貧乏なのかと(笑)

デスメタルですか!
凄いことですが、なとなく、お気持ちはお察し出来てきました(笑)

佑子さん
そうなんです。もともと、地元栃木県に就職したのも実家の都合でしたし。

それでも頑張って、仕事も人間関係も円満にこなしてしまったわけですね。

佑子さん
そういうことです。
なので、心の奥底では、与えられた役割を範囲内で円滑にこなすより、情熱を持って自ら人生を切り開くことに強く憧れていました。そして、36歳のときです。今を逃したら自分は一生変われないと感じて。会社に迷惑をかけないタイミングを狙って、がっつり残っていた有給も消化せずに辞めたんです。親にも事後報告でした。

それは、思いきりましたね。おめでとうございます。
そして、その後、アパレル関係のお仕事、料理教室と会社勤めをなさって、2020年4月に独立。まさに、緊急事態宣言が発令されると同時期でした。

佑子さん
はい。予定していたケータリングの仕事が全てなくなりました(笑)
その後はシェフの料理教室や撮影のアシスタント、企業への商材に関する料理の試作やメニュー提案、友人の飲食店のお手伝いなど、いろいろ経験させていただきました。忙しすぎて自分の時間がなくなるなど悩みが出てくれば、以前のように無難に適応せず、環境を変えるように心掛けました。

ご自身の意向を貫いて、とてもタフに考え、動かれたのですね。

佑子さん
始めからコロナ禍で、よい時期を知らなかったのがよかったのかも。
それに、自分で決めたことだったから夢中になって動けました。サイコさんを始め見守ってくださる先輩方がいらしたのも、よかったです。

そんななか、ご自身のお仕事の核が確立されていったのですね。

料理が落ち込むきっかけになるのなら、それをなくすお手伝いがしたい。

佑子さん
会社員時代から、料理に苦手意識を感じている女性が多いことが気になっていました。
まったく料理をしないのなら理解できますが、日々の生活と両立して自分やご家族のご飯を作っているのに、自信がないとおっしゃる。この謎に高いハードルをなんとかしたい!と強く思いましたね。ハイレベルな世界の料理が手軽に食べられる日本特有の悩みかもしれないけれど。

確かに。男性は美味しいパスタを作れたら素敵だけど、女性はパスタだけではふつうで、出汁をとれたり、発酵食を取り入れて初めて料理上手みたいな風潮があります。

佑子さん
私は幼い頃から母のお手伝をしながら料理を覚えたのが幸せだった。料理は日常そのもの、生活そのものだから上手い下手もなく、美味しくできると単純に嬉しかったな。

それは、お母様の教えかたも素晴らしかったのだと思います。
最初に佑子さんから “レシピのない料理教室” とうかがったとき「素材によって調味をアレンジする上級者向けかな?」と思いましたが、ひびのわradioを聴いたら、お野菜も調味料も代用できるものを教えてくださるし、コツもシンプル。そもそも料理は五感を使って楽しむもので、上手いも下手もないのだとほっこりしました。
そのほっこりが欲しくて、ラジオを聴いていらっしゃるファンも多そうです。
佑子さんは料理を教えているようで、それだけではなくて、生徒さんの声に耳を澄ませて、そのひとつ奥にある希望が叶うように、壁を取り払ってゆくような作業をなさっていますね。

佑子さん
そうだったら嬉しいですね。私は料理の “ねばならない” に苦しんでいる人を見ると放って置けないんです。きっと過去の自分と重ねてしまうのかもしれないですね。

場の空気を読んで、他者の期待に答えまくっていた頃のご自身ですね。

佑子さん
そうです。当時はコンプレックスを他人のせいにしてたけど、本当は自分が受け入れた “ねばならない” にがんじがらめになっていたんです。それをどこかで分かっていたから、とても悔しかった。

その悔しさが、優しさに育っています。
そうか。だから、佑子さんの教室には決まったレシピはないし、特別な道具もいらない。オンラインの場合はまず、参加者さんの自宅にあるすべての調味料や調味器具の画像を送ってもらうんですよね。そんな教室、見たことないですよ(笑)

これらは、事前に生徒さんから送られてきた台所の画像です。ここから、濃密な対話が始まるのだとか。

佑子さん
これまで、たくさんの料理教室に通いましたが、センスも使い勝手も最高なキッチンがあって、プロ用の調理器具が何種類も揃っている。生徒さんはお洒落なレストランに来たような気分で、その日に学んだ料理をいただくんですね。経験上、そのレシピを日常で再現するかっていうと疑問なんです。憧れの雑誌やレシピ本を見て揃えた調味料って、悲しいかな台所のすみで埃をかぶっていたりしますからね(笑)

耳が痛いです。学んだ料理を作るより、台所のリフォームをしたくなっちゃう(笑)
佑子さんはそこを徹底して、いつもの台所で、そのひとが本当に食べたい料理を楽しめるように導いてくださるんですね。この画像のやりとりはとても興味深いです。まさに、真実という感じで。

佑子さん
初めはあまり見せてくれないのですが、後からいろいろ出てきたりするんです(笑)

引き出しの中身は、気を許せたひとにしか見せられませんからね。
具体的に、生徒さんのどのようなリクエストにお応えしているんですか。

佑子さん
「海外旅行でまとめ買いしたスパイスやハーブソルトの使い道がわからない。」「酸っぱいのが苦手で、何年も減らないお酢を使い切りたい。」「ル・クルーゼを日常で使えるようになりたい。」「無水鍋の活用法を知りたい。」「手間かけずに美味しいものを食べたい。」「一回作ったら何日ももって飽きないレシピが知りたい。」覚えているところで、このようなリクエストです。

おもしろい! みなさんとても素直ですね
しかも、佑子さんの回答は個々人の嗜好や台所環境によって変わるんですものね。
まさに人生の裏舞台を支える仕事人といった感じです。

佑子さん
ル・クルーゼは洗うとこから始めました(笑)

埃かぶってますからね(笑)
調味料なども、新たに買い揃える必要はないんですね。

佑子さん
例えば、オリーブオイルが必要なレシピでも油があればなんとかなるし、砂糖がなければ、冷蔵庫の隅で固まっているジャムを使えばいい。梅干しは酸味や塩味の代用にもなります。

まさに、佑子さんが提唱なさっている「アルモンデナンデモデキルサ」ですね。

佑子さん
そうなんです。
以前、私の恩師である文化人類学者 辻信一さんが主催した世界会議のレセプションパーティで料理スタッフをしたとき、調理場が大学内にある会議室で水道も火口もなかったんです。ところが、メインシェフの本道佳子さんは困った様子もなく淡々とお仕事をなさっていて、実にかっこよかったです。
辻先生同様 “ねばならない” がまったくないんですよ。私はそういうプロフェッショナルに憧れるし、自分もそう在りたいと願っています。

ねばならない。私もたくさん持っていると思います。幼い頃からの決まりごとや制限は、その存在に気づくことすら難しそうです。

佑子さん
それまで固い表情で料理に挑んでいた生徒さんの表情が、ねばならないが外れた瞬間、ふわっと輝きだすんです。それを見ると小さくガッツポーズしちゃいます(笑)

佑子さん
料理が落ち込むきっかけになるのなら、それをなくすお手伝いがしたいです。自炊できれば安く済むし、自分の好きな味を自分で作れるようになったら、人生最強だと思います。
自炊で自分を喜ばせることができる、それが難しいことではないと私はわかっているので、そのお手伝いをしてゆきたいと思っています。

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サイコさんは “ねばならない” を外してくれるひと。

“ねばならない” という固定概念や制限は、一つ外せたと思っても、後から後から、その時々に見合ったものが出てくるような気がします。

佑子さん
人生の課題のように現れますね。自分で気づくのは難しいので、悩んだときこそ心を開いて人々とのコミュニケーションを大切にしようと考えています。

佑子さんが書かれたサイコさんとのメンタリングの記事、とても興味深かったです。
サイコさんとの出会いは、サイコさんがオーガナイズしていたディライトキッチンのイベントやワークショップに、佑子さんが参加したことがきっかけだそうですね。

佑子さんも参加していたデイライトキッチンでのイベント/RiceBall.Network Presents The essential of Life〜すべてのいのを中心に考える世界へ〜 稲葉俊郎の未来会議〜

佑子さん
当時、私は会社員でした。サイコさんは、まさに私が憧れる女性社会起業家。個性豊かで目的意識の強い、場を作る統括者というオーラがありました。
独立前の私は “ねばならない” が外れている方々に憧れて、その素養を学びたくて、自分から近づいていたのかもしれない(笑)

しかも、サイコさんはひとの “ねばならない” を外されますね。

佑子さん
そうなんですよ。例えば、私が自分の個性のなさや自己主張が苦手なアシスタント気質など、起業に向いてないんじゃないかと相談すると「それ、そんなに悪いことかな?」とサラリとおっしゃる。

arila!マガジンメンバーでもある さえぐささちよさん が当時営んでいた東京八王子のレンタルスペースで車座になってゆったりと行われていた在り方デザインレッスンの様子

そして、そここそが佑子さんの唯一無二の価値であると。

佑子さん
そうなんです。よく考えてみれば、サイコさんも仕事に関わる全ての人々の能力や才能を活かす裏方のお仕事をなさっているんですよね。起業家や個人事業主だからといって、強い個性を押し出すばかりではなかったんです。
コンプレックスで視野が狭くなったり、世間の常識や周囲の意見に惑わされたとき、サイコさんはそっと背中を押してくれます。

都内恵比寿のキッチンスタジオで行われていた在り方デザインレッスンでは、サイコさんが運営する社食事業所の料理長が直々に料理を振る舞いに来るというスペシャルDAYも!佑子さんはこの恵比寿の在り方デザインレッスンを受講されました。

サイコさんの在り方デザインレッスンでも、ふわっと表情が輝きだす方々を、何人もお見かけしたことがあります。自分の深い気持ちに気づけて、応援してもらえる心強さ。喜びに驚きも混じっているような眩しい光景でした。

佑子さん
現在は起業した者同士という関係性になり、サイコさんは、のんびり屋の私とは違う視点から意見をくださる。サイコさんは人を動かす立場なので、第三者的な目線で私を見てくれます。

フリーランスにとっては、有難い存在ですね。

佑子さん
困ったときに相談できる人です。相談すると凄い力をかけてくださるのでエネルギー不足にならないか心配になるくらい(笑)

そして、現在は佑子さんが生徒さんの “ねばならない” を外すお手伝いをなさっています。その際のきめ細かな配慮は、脱サラ前の佑子さんの性格がそのまま活きているように感じます。
生徒さんの嗜好と理想、苦手分野、生活習慣と台所環境、冷蔵庫の中の使い切りたいもの、捨てたいもの、すべてを円満に治めてゆく配慮です。

佑子さん
確かに。最近は、会社員時代に培ったものが、すべて役に立ってると感じることが多いですね。

佑子さんの平和主義は、全然ムダじゃありませんでした(笑)

佑子さん
あはは(笑)アシスタント気質も存分に活用しています。
そう振り返ると、独立も自分の “ねばならない” を外す一環だったようです。
脱サラした当初は「会社員に戻ったら負けだ!」などと意気込んでいましたが、現在はフリーランスという働き方にこだわっていません。
自分らしく生きられるのなら、なんでもいい。私を受け入れる企業があるかは別としてですが。

世界の見え方や考え方が、軽やかになられたのですね。経験って素晴らしいですね。
今後はどうしたいですか?

佑子さん
コロナ禍が収束したら、生徒さんのご自宅で一緒に料理がしたいです。オンラインだと、やはり、火加減水加減の説明が難しかったりする。台所から伝わってくる、そのかたの空気感も大切にしたいです。

画像に写っていないものが、たくさん出てきそうですね(笑)

佑子さん
それがいいのです。隠したい部分が、私たちを明るい方向に導いてくれることも存分にあるのですから。

大塚佑子(おおつかゆうこ)
ひびのわ主宰。料理家。 レシピのない料理会をオンライン、リアルともに開催中。「アルモンデナンデモデキルサ」を唱えながら、その日その時、目の前の素材を美味しく食べきる料理を伝える。ビーガン検定の講師、食品メーカーの商材や航空会社の機内食メニューの試作、提案、シェフの料理撮影やイベントのアシスタント等々、多岐に渡って活躍中。

 

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