アリス・ウォーターズ インタビュー【SPREADING THE EDIBLE EDUCATION】

アリス・ウォーターズ インタビュー【SPREADING THE EDIBLE EDUCATION】

 PERISCOPEはニューヨーク在住、著書「ヒップな生活革命」で知られるライター佐久間裕美子さんのウエブメディア。
 2014年8月付けでPERISCOPEに掲載されたこの記事は、エディブル・エデュケーションモデルのパイオニア的存在であるカリフォルニア州バークレーの【エディブル・スクールヤード・プロジェクト】を創立したアリス・ウォーターズさんのインタビューで、アリスさんの真の言葉が語られていると感じられるリアルでセンス溢れる切り口です。
 佐久間裕美子さんご自身よりこのインタビューの共有についてご快諾いただきました、感謝いたします。
 アリスさんが「急務」だと語るとともに一方「この価値観が主流になりつつあることを実感した」とも言う、エディブル・エデュケーションとは…。

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 ローカヴォア(地元産の食材を食べる運動)から「ファーム・トゥ・テーブル(農地直送)」まで、私たちの食に対する意識を変えてきたムーブメントの大半は、アリス・ウォーターズが1971年にオープンしたレストラン「シェ・パニーズ」でやってきたことに、そのルーツがある。そのアリスが、ここ数年、「エディブル・スクールヤード(食べられる校庭)」というプロジェクトの拡大に尽力している。カリフォルニア州バークレイのある学校からスタートし、今ではアメリカ全土に広がりつつあるこのプロジェクトは、学校に農場を導入することで、食材の育て方と食べ方を子供たちに教えるものだ。このプロジェクトを全世界に広めようとしているアリスが、自身の想いを語ってくれた。

━ あなたが各地の学校に広めようとしている考え方について教えてください。

私が伝えようとしているのは、真新しいアイディアではありません。私たちの文明と同じくらい古いものです。自分たちの体に良い食材を育てる、自分たちに栄養を与えられる方法で、また次世代のことを考えながら土地を耕すという考え方で、たとえば旬のものを食べること、家族や友人と一緒に食事をすること、農家の人々を大切にして、大自然こそが私たちの魂のふるさとだと理解すること、そういった食との付き合い方です。それに比べたらずっと新しいファストフード文化、私たちはある意味捕われてしまっています。私が伝えようとしている古い価値観は、私たちの体の中にあるもの。でも、私たちは、こういうことは大して重要じゃないと教えられてきました。何でも手早く簡単でなければ、と。過去や未来に気を配る必要はない、ただ消費し続ければ良い、食材の産地は関係ないし、料理は退屈でつまらないもの、と。こういう考え方は、私たちにお金を使わせるための、ファストフードの戦略のひとつです。

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━ あなたは1970年代から<シェ・パニーズ>でこういった価値観を実践していますね。どこから着想を得たのですか?

この価値観を、19歳の時に、フランスに留学したときに、まだ当時守られていた形で学べたのは幸運でした。人々は、子供たちのこと、テーブルに何を並べるかに気を配り、1日2度はマーケットに出かけていた。これはひとつの生き方です。私もそういう風に暮らしたかったから、その文化をアメリカに持ち帰りました。そうやって<シェ・パニーズ>で始めたことがユニークなことに思えたのは、ファストフード文化の中に生きているからだと気が付きました。でも何も珍しいことではないのです。私がやっていることは、人類が長い間、実践してきた食べ物との付き合い方、そして他者を思いやる方法なのです。

━ オーガニックで健康的な食事は贅沢だという見方がありますよね。中流階級や金持ちの人々だけの特権だと。それに対して、あなたのアプローチは子供たちに働きかけることですね。

そのとおりです。子供たちの感性に訴えるには、感性がまだオープンな小さい時から始めないといけません。ひとたび「早い・安い・簡単」のアイディアに毒されてしまったら、難しくなりますから。将来、私たちが暮らす地球の管理人となる子供たちに、正しい価値観を教えるべきです。世界中の学校に本物の食材を持ち込むのは重要なことです。学ぶべきは食材の栄養だけではありません。食事を通して学べる価値もあります。急いで食べれば、座ることは別に重要ではないと考えてしまう。学校は社会的正義を実践するべき場所ですから、子供たちには無料で食べさせるべきだと思います。そうすれば子供たちも、どうお金を使うべきなのか、違う方法で結論を出すと思います。新しい携帯や靴のような、彼らが今お金を使っている色々なものの代わりに、食材にお金を遣うことを覚えるかもしれない。私たちの考え方すべてを支配しているファストフード文化に麻痺してしまったら、自分の文化を維持するのは難しくなる。革新という概念に抗うのは難しいことですから。

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━ あなたの教えのひとつが、食事は安価であってはならないということですね。

食材が安価なときは、誰かが負けているはずです。食事は安価にはなりえません。リーズナブルな価格は可能かもしれないけれど、安価にはなりえない。政府が支援しているか、国際的な食関連企業が作るものでないかぎり。大企業は誰にでも売ります。より多くの人々に買ってもらうことで、彼らは儲けを出しています。質ではなく量なのです。安価な食材を買うことに慣れてしまえば、ファーマーズ・マーケットで売られているものは何でも高く思えてしまう。そして、そういうことを考え過ぎないようにと教えられる。

━ 自分を食べさせる方法を知れば、自分を解放することにもなりますね。自分自身の生活をよりコントロールできるようになる。

その通り。全てここに繋がってきます。テーブルにつくということが、寛容さと他人に耳を傾けることを教えてくれます。それは共有すること、毎日の暮らしの本当の喜びです。ただ自分の感性を取り戻すことが必要なのです。

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━ 「エディブル・スクールヤード」の試みについて教えてください。

最初は戦略的に重要な都市で「エディブル・スクールヤード」プログラムを始めようと思いました。でもそれを米国の多様な都市の文化の中で行うのは、複雑なことだと気づきました。だから今、私たちは世界中で効果を出しているやり方を集めて、運動を最大限まで広げようとしています。そうすれば来るべきときに、公立学校にカリキュラムを提供できる。モンテッソーリやワードルフ、シュタイナースクールなどの学校はもうこの考え方を実践しています。これらの学校が、未来に必要なことの基盤を作ってくれている。「エディブル・スクールヤード」は、子供たちの反応の早さを証明しました。子供たちはこの価値観を学びその大切さが分かるのです。学校では食料供給に対する基準を設けるべきです。学校は農家を支援して、農家は学校を支援する。この方法が、アメリカの人口の20パーセントにあたる学童児童の食問題を解決する手早い方法だと信じています。

━ 私たちの食についての意識は進歩しているでしょうか?

ここ5年で、この運動は急速に広がりました。若い人たちはこの運動の切実さをよく理解しているし、未来の自分、そして自分の子供達の暮らしを心配している。自然とのつながりを求め、農業に参加しようとしている。これは素晴らしいこと。人々はひどく孤独で、繋がりに飢えています。人との繫がりと、自然との繫がりに。だから、その機会を与えられれば、すぐに恋に落ちるのです。そう、まさに恋に落ちるようなこと。だから教室を(この環境に)整えれば、子供たちは恋に落ちてるはずです。子供たちがその威力をみせてくれると思います。でもこれは切実な急務です。

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━ あなたは日本と密接な関係をお持ちですね。

日本には、食を愛でる伝統と旬の考え方に、深い共感を覚えます。そしてそれが文化に根付いている。たとえ世界中のあちこちで起きているような、食にまつわる変化が日本でも起きているとしても。新米を祝うこと、食文化と密接に関わる贈り物の風習、食は尊いもので、人々を癒す存在という考え方のように。アメリカ人は、植物からビタミンを摂取できることを知りません。薬だけが病気を直せると思っています。日本の食文化が、国によって守られるようになればいいと思います。

━ 多くの人が現状に気づくよりもずっと早く、あなたはこの大きな戦いを始めました。「エディブル・スクールヤード」が注目されてきましたが、それでも大変な戦いのように思えます。あなたの原動力はなんですか?

最高の仕事をしていると思っています。この運動を経験することに喜びを感じている若い人たちと交流できるのですから。けれど、これは本当はムーブメントではありません。オーガニックフードを食べることを「トレンド」と言う人がいますが、トレンドではありません、人間の生活の基盤なのです。ブラジルでもハーレムでも、「エディブル・スクールヤード」に行く時は毎回ワクワクします。子供たちはすぐに反応して、自分の考えを話せるようになります。まるで牢獄から解放されたように。それまでたった二色か三色で世界の全てを見ていて、周りの世界が見えていなかったみたいに。今まさに恐ろしいことが起こっています。だから急務なのです。11月にウォールストリート・ジャーナルが、私についての記事を書いてくれた時、この価値観が主流になりつつあるのを実感しました。人々は目を覚ましつつあるのです。

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━ 同時に、GMO(遺伝子組み換え作物)など、心配すべきことも多いようです。

(GMOを)買うのをやめるしかありません。企業は売りたいわけですから、買わなければ、どこか別のところに行くでしょう。でも企業は、他の場所で店を開くのです。だからこそ、国際的な議論を続けていかないといけないのです。

 

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Alice Waters
料理家、レストランオーナー、活動家、作家。

アリス・ウォーターズ。ニュージャージ州・チャタム出身。大学進学のために1964年にカリフォルニアに移り、そこで反戦運動と「小さな惑星の緑の食卓」で知られるフランシス・ムア・ラッペに影響を受ける。留学先のフランスで食文化に感銘を受け、1971年バークレイに<シェ・パニーズ>をオープンした。1996年には<シェ・パニーズ基金>を設立し、カリフォルニア・バークレイのマーティン・ルーサー・キング・ミドルスクールで、子供たちに農業を教えるエディブル・スクールヤード・プログラムをスタート。2005年、<シェ・パニーズ基金>を<ザ・エディブル・スクールヤード>に改名して、食育の実践のための提携プログラムを開始した。http://edibleschoolyard.org/

 
Interview : PERISCOPE
Photography : Michael Piazza, Daniel Dobers
Translation : Aya Minami

PERISCOPEのご好意により転載させていただいております。
元の記事はこちらから<SPREADING THE EDIBLE EDUCATION アリス・ウォーターズ、インタビュー>

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