Edible × Social Education for Family <Report>

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子どもと大人が一緒につくって、食べて、考える
– ホンモノの手作りチョコレート教室

top荻沼さんが働くオルター・トレード・ジャパンで支援するインドネシア・パプア州の生産者から輸入しているカカオ豆。フライパンで軽く炒ると、香ばしく深いカカオの香りが立ちこめました。

 食の生産者を知り、素材がつくられている環境を知るためのワークショップやセミナーは、子どもと大人が食について一緒に感じて考える、またとない機会です。今回は親子を対象に開催された「ホンモノの手作りチョコレート教室」をレポートします。子どもにとって身近なチョコレートですが、どんな材料でできているのか、そしてどうやってつくるのかは意外と知られていないですよね。

 このワークショップは、宅配事業でオーガニック農家と消費者を結ぶ活動を40年以上してきた「大地を守る会」が主催し、講師はオルター・トレード・ジャパンの荻沼民さんが担当しました。チョコレート作りのワークショップは大地を守る会でも大人気で、小学生のお子さんを持つご家庭を中心に定員の4倍近い応募があったそうです。

 2016年1月17日、会場の港区立エコプラザには50名近い参加者のみなさんが集まり、賑やかに会はスタートしました。

01_DSC06331カカオポッドを手にした荻沼さん。「この中にカカオ豆が入っているんですよ」という説明に、子どもも大人も興味津々です。

02_DSC06269カカオバターを手に「漂白していないので、色が少し黄色っぽいんです」と説明する荻沼さん。カカオマスやココアパウダーを加えずに砂糖や他の材料を加えるとホワイトチョコレートになります。

講師の荻沼さんがチョコレートの原料、カカオ豆の入ったカカオポッドを手にすると「カカオがこんなに大きいと思わなかった!」という声があがります。カカオ豆をフライパンで炒った香りをかいだ子どものわくわくした表情を見ると、五感で素材の力を感じることの大切さを改めて感じます。

 この日はチョコレートバーを溶かして型に入れて固める作り方ではなく、実際にシンプルな素材のみでプロがつくるのとほぼ同じプロセスを体験してみようと、不必要な添加物を加えずにカカオマスとココアバターを主原料として準備しました。ちなみに収穫したカカオポッドからカカオ豆を取り出して発酵させて、乾燥と焙煎、そして粉砕を経たものはカカオニブ。そのカカオニブをペースト状にして冷やし固めるとカカオマスと呼ばれる状態に、これをさらに圧搾すると油脂分はココアバターに、固形分は粉砕してココアパウダーになります。チョコレートのセミナーは今シーズンだけで10回以上!という荻沼さん。原料を加工する一連のプロセスの講義も、はきはきした声で子どもの心をつかんでいました。

03_DSC06283まずはカカオマスとカカオバターを細かくカット。ここではお母さんたちが大活躍。大地を守る会のスタッフのみなさんも、荻沼さんのサポートをしながら参加者の皆さんと交流します。

04_DSC06289チョコレートは砂糖や脱脂粉乳など副材料を入れて溶かしたら、冷やしたり温めたりしながら、滑らかで口溶けの良い状態に加工します。大人も子どもも温度計の目盛りを真剣に見つめています。

 ひとつのテーブルで2グループに分かれてビターチョコレートとミルクチョコレートの2種類をつくります。主材料のカカオマスとココアパウダーに砂糖だけを入れるビターチョコレートに対して、ミルクチョコレートはビターチョコレートよりも多めの砂糖と脱脂粉乳を加えます。ビターチョコレートにはマスコバド糖を、ミルクチョコレートには粉糖を用いて、砂糖の種類を変えた時の味わいの違いはあるか。またビターチョコレートとミルクチョコレートでは、砂糖の量や材料にどんな違いがあるか。そんなことがわかるようにレシピを工夫していました。

 カカオマスとカカオバターを細かく削ったり、湯煎で溶かしたりというシンプルな作業ですが、良質の材料を使ったお菓子づくりの醍醐味を子どもも大人も楽しんでいる様子が伝わってきます。ちなみにチョコレート作りのワークショップは、直火を使わず湯煎のみで調理できるため、調理実習室など設備のない施設でも開催しやすいとのことでした。

05_DSC06315温度を調整できたら型に流して、好みでナッツやドライフルーツをのせて飾ります。ここは子どもたちの出番です!

06_DSC06344チョコレートを型から取り出して完成! でもすぐに全部は食べないで、と荻沼さん。実はチョコレートは一定の時間寝かせて、味を落ち着かせてから出荷するもの。数日経って発酵が進んだ頃にも味わってと教えてくれました。

 途中生地が固まってしまったり、こぼれてしまったりしたところもあったけど、みんなでつくれば楽しい思い出に。型に流して固まるまでのしばらくの間、今日使ったカカオ豆のつくられる背景について荻沼さんがスライドを使って説明してくれました。

 荻沼さんが「どんな国でチョコレートがつくられているか知っていますか?」と尋ねると、スイス・ベルギー・フランスといった国名が子どもたちから挙がりますが、「じゃあカカオ豆がつくられている国は?」というと、ガーナ・エチオピアという答えが返ってきます。そう、チョコレートの原料のカカオ豆も、多くの生産地では原料を供給するだけで、実際に加工するのは別の国なことがほとんど。生産国ではより多く、より安価なカカオ豆を求められるため、カカオの木を植えるために森林を過剰に伐採したり、違法な児童労働で収穫を行ったりする問題が起きています。

 そのために必要なのは生産する人たちが自分たちのつくった豆の価値を認識する機会をつくり、加工の技術を高めるサポートです。オルター・トレード・ジャパンでは、カカオ豆をつくっている人も、チョコレートを食べる人も、安全・安心な暮らしができるようなフェアトレード(公正な交易活動)を目指しています。

 「自分がチョコレートを楽しむだけでなく、その原料をつくっている人のことも考えてみよう」という荻沼さんのメッセージは、カカオ豆を触ったり、カカオマスを刻んだ後だからこそ、自然に体の中にしみ込んでいくようです。

07_DSC06323カカオ豆の産地国をスライドで紹介。今回使ったカカオ豆はインドネシア・パプア州のものでした。

08_DSC06349港区立エコプラザでは、環境に関する教育要素を入れたセミナーを受け入れたり開催したりしています。施設の内装には東京・あきる野市の針葉樹の間伐材を利用した建材が多用されています。

 いよいよ待ちかねた試食の時間! 型から外したつややかなチョコレートに子どもたちの目が輝きます。ビターチョコレートはマスコバド糖のちょっとざらっとした食感が印象的。ミルクチョコレートはスムーズで甘さをより感じます。

 みんなでつくったチョコレートをお土産に分け合って、ワークショップは無事終了しました。子どもたちは「美味しかった」「甘かった」「楽しかった」と満足そうです。参加したお母さんたちはフェアトレードなどについても関心が高かった方も多く、それだけに素材に触れて実際に調理する体験を通じて、より感心が高まったという声も寄せられました。

 みんなで一緒につくって食べる機会を通じて、美味しさの向こうに広がる世界について思いを馳せること。ワークショップは日常の暮らしの中に考えるきっかけをつくる、小さな共感の時間なのです。 

text & photo : aya ogawa

【取材協力】
大地を守る会 http://www.daichi-m.co.jp
オルター・トレード・ジャパン http://altertrade.jp
港区立エコプラザ http://minato-ecoplaza.net

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