ベイエリア食育レポート 第二回:コンシャスキッチン第2部

ベイエリア食育レポート 第二回:コンシャスキッチン第2部

第一回のコンシャスキッチンのエギュゼクティブディレクター、ジュディーさんのお話の続きです。

現在、コンシャスキッチンは、マリン郡以外の、近隣の3つの小学校、(リッチモンド2校、エルセリート 1校) で2017年の春に、一週間ずつ試験的に朝と昼の給食を担当することになりました。 この3校が、給食を変えることに興味を示してくれた初めての学校です。この3校のある学区の学校給食を担当する フードサービスディレクターが、実際に学校給食のシステムを変えることができると思うまでにかなりの時間を要したようですが、学校側の支持を得てここまできました。

アメリカの学校給食は、生徒たちの家庭の所得によって、給食費が全額免除になったり、低価格になったりします。 この3つの学校のうち、一つ目の学校は、全校生徒の100%、二つ目の学校は全校生徒の60%、3つ目の学校は全校生徒の20%が無料または低価格で給食を食べています。わたしたちのゴールは、生徒の家庭の所得に関係なく、どの学校でも、できる限り質の良い学校給食を出すことです。低所得者の家庭の多い学校では、そうでない学校に比べて、寄付を余計に募らなくてはなりません。先日、この3校のうち一校の給食を見に行ってきました。この学校では、一回の給食費が2ドル25セント(約230円)ですが、そのうち55%は労働費にあてられ、残りの1ドル(約100円)ほどが食材にあてられます。そんなわずかのお金でどんな給食が出せるのかというと、まったく粗末なものです。実際出されていたものは、わたしの目には「毒」にしか見えませんでした。こんなものが子供達の体に入って栄養になるわけがないのです。わたしたちのゴールは、子供達がどんな食べ物を体内に取り入れるべきかということにもっと意識を向けてもらうことです。そして、その意識がとても大切だということを証明していくことです。この3つの小学校で、試験的に一週間ずつ給食を作ってもらうために、15人の有名なシェフに声をかけました。彼らに1日ずつ学校に来てもらい、FLOSN(Fresh,Local,Organic,Seasonal,Non GMO / 新鮮な、地元の、オーガニックの、旬の、遺伝子組み換えでない)の概念にそって、朝と昼の給食を作ってもらうことになっています。そして、その間、子供たちの出席率や遅刻率、子供達の教室での態度などのデータをとり、2、3週間後のデータと比較します。もしうまくいけば、その中の一校は、来年の新学期8月からこの給食の導入が予定されています。他の2校はキッチンの設備などの準備もあるため、もう少し時間がかかりそうです。

この学区の協力を得てFLOSNの給食が成功すれば、大きなシフトになります。現在、小学校の給食に使われる食材は、刑務所、病院、ホスピスなどに食事を配給している世界的に大規模な食品会社が担当しています。それはまったく栄養のない食事です。そのような食事が栄養を一番に必要とする人たちのところに配給されるのです。そこで、もっと地元の食材で給食を作ろうという試みがありますが、それでも、農薬にまみれた食べ物で作った給食を食べさせていたら、わたしたちのやるべきこととは異なってしまいます。GMO(遺伝子組み換え)や土壌汚染の問題など、そういったものをすべて意識した上で子供達になにを食べさせるのか考えることが重要になってきます。
「FLOSNのうち、Fresh(新鮮な)Local(地元産の)Seasonal(旬の)だけの食材への変更を考えたことありますか?」と聞かれることがありますが、わたしは、食材がオーガニックで、Non GMO(遺伝子組み換えでない)であることは必須であって、変更はできませんとお答えしています。そういう質問をされると、わたしはこう言います。
「あなたの責任はどちらにあると思いますか。私たちの未来ですか、それとも大企業の利益ですか?」と。わたしたちがしていることは他の国にも多大な影響を及ぼします。GMOの種を買うように勧めたりすることで世界中が影響を受けてしまいます。科学者はもうすでに人口減少の原因がGMOの作物だと言っています。アルゼンチンでは、GMOの大豆が栽培されている地域でグリホサート(モンサント社で開発された除草剤:遺伝子組み替え技術を用いた除草剤耐性作物とセットで用いられている)が空から散布されていて、その地域のすべての家庭で、癌の発生や、奇形の子供が生まれていることが報告されています。医者たちがこれを止めようと関わり始めたものの、すでに組み替えられてしまった遺伝子は元の状態に戻すことはできないのです。そんなことをわたしたちは現在しているのです。わたしたちはGMOの作物が次世代にどんな影響を及ぼしていくのか全くわからないのに。とても恐ろしいことです。わたしたちは、身体に安心なものを取り入れるよう出来る限りのことをしなければいけないのです。ですから、わたしはだまってはいないし、妥協もしません。わたしたち一人一人がそういう意識を持って給食作りに取り組むこと、コミュニティーとしてできる限りのことをすることが大事です。

親しい友人に、コンシャスキッチンのことを説明するために絵を描いたことからわかったことがあります。絵の中心に核となっているのがキッチンで、その周りに、それに関係する、教育、健康、ゴミ問題、、、などのセクターを線で繋いで描きました。そしてそのセクターごとに、どうしたらそこにいる人々にインパクトを与えらえるか、ということを書いていきました。わたしたちコンシャスキッチンは、公衆衛生局や教育委員会の人たちと親しく交流していますが、どんなコミュニティーにもスーパーバイザーの役割の人がいるので、その人たちに集まってもらい、子供達の健康についての目標を決め、それに向かってコミュニティー全体で協力しあって給食作りに取り組んでもらうのです。こうして、みなさんが協力してくれたおかげでここまで来られたのですから、これを見本に、他の学区でも同じように、コミュニティー全体の協力のもとで給食作りに取り組んでもらうことが大切です。

この地域には、信頼のおける農家や牧場経営者、食品販売業者がたくさんいます。そしてベイサイドMLKアカデミー小学校から車で5分ほどのところにGOOD EARTHという地元の自然食マーケットがあります。そこは、マーケットならではの購買力を活用して、わたしたちが利用しているのと同じ販売業者から食品を大量に仕入れています。そのおかげで、わたしたちは、その販売業者から今年は30−50%も安く食品を買うことができたのです。販売業者側もとても良心的です。というのも、その人たちの子供達もベイサイドMLKアカデミー小学校に通っているからです。このように、コミュニティーを築き上げ、そこで出来る限りのことをしていれば、それ以上あれこれ考えなくても、自然にとんとん拍子に事が進んでいくのです。下を向いて「どうしたらいいだろう」と考えている時にふと顔を上げたら、波紋が広がるようにどんどんまわりに影響が広がっているのが見えるという感じです。それはほんとうにすばらしいことです。そして、わたしたちができたことは、みなさんにもできるのです。

以上、コンシャスキッチンのエギュゼクティブディレクター、ジュディーさんのお話でした。

コンシャスキッチンでは、毎月、『今月の食べ物』と称して、ひとつの食べ物に焦点をあて、子供達の食べ物への理解を深めてもらうよう努めています。
『今月の食べ物』は、2013年に始まりました。それは、コンシャスキッチンが始まった最初の週のことです。コンシャスキッチンのシェフがキノアを給食のランチに出しましたが、キノアを見たことのない子供たちは、興味を示さずただ素通りしていきました。もっと子供達に興味を持ってもらうために、次の日にシェフが各教室を回って、キノアのマフィンを子供達に試してもらい、キノアの紹介をしたのです。その瞬間から、キノアはコンシャスキッチンの人気者になりました。そしてこの日から『今月の食べ物」が誕生しました。
『今月の食べ物』は月ごとに決まっていて、各テーブルには『今月の食べ物』の名前のカードと写真、そして説明書が置かれています。説明書には、その食べ物の栄養価、種類、豆知識、歴史、栄養を損なわない調理の仕方、その野菜や果物を育てるのに適した気候や土地、そしてなぜオーガニックがよいのか、などが書かれています。先生が生徒たちに説明書を読みきかせ、一緒にその食べ物について話し合います。

1月 : 柑橘類
2月 : レタス
3月 : コラードグリーン
4月 : ブロッコリー
5月 : いちご
6月 : 核果類(桃、プラム、アプリコットなど)
7月 : にんにく
8月 : トマト
9月 : メロン
10月 : ビーツ
11月 : キャベツ
12月 : スクワッシュ

毎月、シェフが『今月の食べ物」のサンプルを持って各教室をまわり、子供達にその食べ物に慣れ親しんでもらいます。
新しい食べ物を子供達に紹介する際には、見た目が美しく、おいしいことが大切です。サンプルを作る時にもそれを意識して作ります。
このようにコンシャスキッチンでは、ところところで、子供達に食べ物への理解を深めてもらうための工夫がなされています。

今年度(2016年ー2017年)、コンシャスキッチンは、GOOD EARTH(地元の自然食マーケット)スクールランチプログラムと提携して、マリン郡で14校の学校でFLOSN(Fresh,Local,Organic,Seasonal,Non GMO / 新鮮な、地元の、オーガニック、旬の、遺伝子組み換えでない)の給食を作るよう取り組んでいます。
ジュディーさんの夢は、アメリカのすべての学校にコンシャスキッチンの概念が行き渡り、子供達がより健康で、滋養のある給食を食べられることです。

以上

The Conscious Kitchenのウェブサイトwww.consciouskitchen.org
コンシャスキッチンのウェブサイトのResources(リソース) の画面からは、コンシャスキッチンの概要、今月の食べ物、給食のサンプルメニュー、レシピ、ガーデニングクラスのカリキュラムの説明などが、美しい写真と共にダウンロードできるようになっています。


【ベイエリアの食育レポート 第一回:コンシャスキッチン第1部】
riceball.network/archives/1416

文・写真 : Harue Wiedlin

Harue Wiedlin

カリフォルニア州バークレーに在住約20年。3人の子供たちの母親。マッサージセラピスト。
子供たちが通ったキング中学校のエディブル・スクールヤード(食育菜園)に8年前からボランティアとして参加し始めたのをきっかけに、ベイエリアの食育にますます関心を持つようになった。現在はエディブルスクールヤードで、ファミリーナイトアウト(生徒とその家族と一緒に料理をして食卓を共にするプログラム)の手伝いをしている。 オーガニックで良質な素材にこだわったグラノーラなどを作り販売するTeaspoon Kitchenというビジネスを2016年に開始し、食を通して、またマッサージセラピストとしても、身心ともに健康になるサポートを続けている。ベイエリアのコミュニティーメンバーとして、食育に熱心な人やプログラムの紹介、そして親の目線からみた食育をレポートしていきたい。

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